タイルのカタログやショールームで、すてきな柄を見つけたことはありませんか。「この柄を玄関ポーチや外壁にも使いたい」と思って調べると、同じ柄なのに品番が違ったり、「屋内用」と書いてあったりして、迷ってしまうことがあります。
先に結論をお伝えすると、タイルは「どこに張るか」に合わせて作り分けられています。屋外用は、雨や凍結にさらされても傷みにくく、壁から落ちにくいように作られています。床用は、すべりにくく、すり減りにくいように作られています。見た目が同じでも、中身は別のものと考えてください。
私はタイルメーカーで20年、商品開発に携わってきました。この記事では、屋外用と屋内用のタイルが分かれている理由と、カタログで「使える場所」を確かめる方法を、つくる側の目線でお話しします。
結論|タイルは「張る場所」に合わせて作り分けられている
タイルの日本の規格であるJIS A 5209(2020年版)では、タイルを使う場所(使用部位)を、屋内壁・屋内床・浴室床・屋外壁・屋外床の5つに分けています。場所ごとに、タイルに求められることが違うからです。
| 張る場所 | とくに大切なこと | カタログで見るところ |
|---|---|---|
| 屋内壁 | 色や形を楽しめる。キッチンや洗面台まわりは水にぬれても大丈夫か | 使用部位の表示 |
| 屋外壁 | 雨や凍結に強いこと、壁から落ちにくいこと | 使用部位、吸水率の区分、耐凍害性 |
| 屋内床 | すり減りにくいこと、歩きやすいこと | 使用部位の表示 |
| 浴室床 | 素足でぬれていてもすべりにくいこと | 使用部位、すべりにくさの表示 |
| 屋外床 | 靴でぬれていてもすべりにくいこと、凍結に強いこと、割れにくいこと | 使用部位、すべりにくさ、耐凍害性 |
玄関ポーチやアプローチ、ベランダ、門柱や塀も「屋外」です。屋根がかかっていても、雨が吹き込んだり、冬に凍ったりすることがあります。
同じ柄でも屋外用と屋内用に分かれている理由
メーカーが同じデザインのタイルを用途ごとに分けてつくるのは、見た目の都合ではなく、技術的な理由がいちばん大きいです。
まずはJISの基準から外れないことが絶対
タイルをつくるとき、最初に決まっているのは「JISの基準から外れないこと」です。屋外の壁に張るのか、室内の床に張るのかで、満たさなければならない基準が変わります。そのため、どんなタイルをつくるかが決まると、原料、焼き方、厚み、裏側の形まで、ある程度の枠の中で決まってしまいます。
私が開発に関わっていたころは、海外から輸入するタイルにも、JISと同じくらいの性能を求めていました。なお、汚れにくさ(防汚性)はJISの項目にはありません。メーカーごとに独自の工夫や基準を設けている部分です。
屋外は雨と凍結にさらされる
屋外のタイルは、雨にぬれ、冬には凍ったりとけたりを繰り返します。タイルが水を吸っていると、その水が凍ってふくらみ、ひび割れや表面の剥がれ(凍害)につながることがあります。
JISでも、凍害を受けるおそれのある場所に使うタイルには、凍結と融解を繰り返す試験が求められています。吸水率の区分(Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類)と凍害の関係は「外壁タイルの重さと耐震性|kg/㎡の確認方法と耐久性・凍害の注意点」でくわしく説明しています。
外壁は「落ちないこと」が大切|裏あしと張り方
外壁のタイルは、高いところに張られます。万一はがれ落ちると、人にけがをさせるおそれがあります。そこで大切になるのが、タイルの裏側にある「裏あし」と呼ばれる凹凸です。
JIS(2020年版)では、屋外の壁などにモルタルで張るタイルには、裏あしが必要と決められています。一方、接着剤で張る場合は、裏あしがなくてもよいとされています。
裏あしの形は、張り方との相性も大切です。私の経験では、モルタルで張る場合は長めの裏あしが必要になり、接着剤で張る場合は短く低い裏あしのほうが、施工しやすく、張ったあとも接着力が落ちにくいと感じてきました。接着剤の種類は「有機系接着剤とは?外壁タイル用の種類・JIS A 5557・選び方を解説」、張り方の違いは「外壁タイルの施工方法|乾式・湿式・接着剤張りの違いを解説」でお話ししています。
また、タイルは張る建物によっても選び方が変わります。大きな建物では、デザインだけでなく、大きさ、厚み、裏あしまで、その建物に合わせて設計したオリジナルのタイルをつくることがほとんどです。戸建てでも、木造住宅と軽量鉄骨の住宅では考え方や基準が違うため、それぞれに合ったタイルを開発する必要がありました。
日本は地震の多い国なので、揺れに対してタイルがはがれないかは慎重に考えなければいけません。ただ、これはタイルだけで決まるものではなく、建物を設計する側がしっかり考えることがとても大切です。
床は「すべらないこと」と「すり減らないこと」
床のタイルで大切なのは、すべりにくさです。これは一般の方にもいちばん分かりやすい違いだと思います。
同じ柄のタイルを、雨にぬれる玄関ポーチと、家の中の玄関ホールで張り分けることがあります。サンプルを手でさわってみると、すぐに違いが分かります。屋外の床用には、ぬれてもすべりにくいように、表面に小さなぼつぼつがついています。屋内用には、それがありません。
JISでも、水にぬれる床に使うタイルは、すべりにくさを試験で確かめることになっています。靴で歩く場所と、素足で歩く場所では、試験の条件も分かれています。床のタイルには、歩いてもすり減りにくいことも求められます。
屋内用のほうがデザインの種類がずっと多い理由
カタログを見比べると、屋内用のタイルのほうが、大きさも形も色も、外壁用の何十倍もの種類があります。
理由は、ここまでお話しした基準の違いです。室内の壁は、張る高さが限られていて、下地も整っていることが多いです。そして何より、雨風にさらされないので傷みにくいです。外壁用のタイルは、製品の規格も施工の基準も厳しいぶん、デザインの自由度が少なくなってしまうのです。
ですから、「外壁にはこの柄がないのに、室内用にはある」というのは、よくあることです。
室内でもぬれる場所と、屋外用を室内に使うときの注意
タイルメーカーにいたころ、いちばん問い合わせが多かったのは、お風呂のタイルでした。お風呂は室内にありますが、素足で歩き、いつもぬれている場所です。JISでも、浴室の床は屋内の床とは別に分けられています。
壁のタイルでも、洗面台やキッチンのまわりに張る場合は、水にぬれても問題がないかを確認しておきましょう。玄関から続くスロープなど、傾きのある床に使うタイルも、すべりにくさを慎重に選ぶ必要があります。
反対に、屋外の床用タイルを室内に使うと、表面がザラザラしているため、靴下がひっかかったり、素足で歩くと痛かったりすることがあります。「外に使えるほど丈夫なら、室内にも安心」とは限らないのです。
かんたんにまとめると、確認したいのは「水にぬれても大丈夫か」と「すべるか、すべらないか」の2つです。
屋内用として売られているタイルは外に使えない?
じつは、屋内用として売られているタイルの中にも、外壁に使えるものがあります。メーカーにいたころ、「この屋内用のタイルを外に使いたい」というお問い合わせはとても多くありました。
そのときは、そのタイルの性能を調べて、外に使えるかどうかを確かめてからお答えしていました。使えない場合は、その理由と、使ったときにどんなリスクがあるかを正直にお伝えしました。
家は30年以上住むことを考えて建てるものです。ですから、安全を第一にお答えしていました。残念そうなお客様もいらっしゃいましたが、ほとんどの方は理由を聞いて納得してくださいました。
ただ、タイルの性能は、見た目やさわった感じだけでは分かりません。自分で判断せず、使いたい場所に使えるかを、メーカーや住宅会社に確認してください。
カタログで「使える場所」を確かめる方法
タイルメーカーのカタログには、ほとんどの場合、屋外・屋内、外壁・内壁、床、浴室など、使ってよい場所がアイコンや表で示されています。まずはそこを見てください。
- 張りたい場所が、使用部位の表示に入っているか
- 同じ柄で、屋外用・床用など別の品番がないか
- 屋外に使う場合、吸水率の区分(Ⅰ類など)や耐凍害性の表示があるか
- 床に使う場合、すべりにくさの表示があるか
表示が見当たらないときや、輸入タイルで日本の基準に合っているか分からないときは、メーカーや販売店に確認しましょう。カタログの吸水率の区分や「磁器質」などの見方は「外壁タイルの選び方|価格・耐久性・デザインで失敗しない基準」でまとめています。
我が家の玄関タイルで後悔していること
家を建てるとき、玄関のタイルは悩みに悩みました。サンプルを取り寄せて、外壁との調和を何度も確かめ、張り方も考えました。
最終的に、外壁の色に合わせて濃いめの茶色を選びました。屋外のポーチと屋内の土間は、張り分けずに同じタイルにしています。このタイルがすっかり気に入ってしまったのと、屋内側も靴で歩く場所なので、これでいいと思ったからです。
ところが、我が家でいちばん後悔しているのが、この玄関タイルです。屋外のポーチ側は、白っぽく汚れてしまいました。土ぼこりと、白華(はっか。エフロともいいます。目地などのセメント分が水に溶け出し、表面で白く固まったもの)が混ざった汚れです。

水洗いでは落ちません。いろいろな洗剤も試しましたが、洗った直後だけ少しきれいになり、しばらくするとまた元に戻ってしまいます。同じタイルでも、屋内側はほとんど目立たないので、違いがよく分かります。
白っぽい色のタイルにしておけば、この汚れはずいぶん目立たなかったはずです。外壁との相性ばかり考えて、床として毎日どう見えるかまでは考えが足りませんでした。とくに、お庭が土や砂利のお宅は、ほこりが入りやすいので、玄関まわりの床の色は慎重に選んでください。外壁タイルの色と汚れの目立ち方は「外壁タイルのおすすめの色は?白・ベージュ・グレー・黒・茶色を比較」でもお話ししています。
住宅会社や工事店に聞いておきたい5つのこと
- このタイルは、張りたい場所(外壁・玄関ポーチなど)に使える品番ですか
- 同じ柄で、屋外用や床用の品番はありますか
- 冬に凍る地域でも使えますか(耐凍害性はありますか)
- この家の下地と張り方(モルタル・接着剤など)に合ったタイルですか
- 使える場所以外に張った場合、保証はどうなりますか
屋外用と屋内用のタイルでよくある質問
屋内用のタイルを外壁に使えますか
屋内用として売られていても、外壁に使えるタイルはあります。ただし、見た目では分かりません。カタログの使用部位の表示を確認し、表示がない場合はメーカーに確認してください。
玄関ポーチに壁用のタイルを張ってもいいですか
おすすめしません。玄関ポーチは靴で歩き、雨でぬれる屋外の床です。壁用のタイルは床として歩くことを考えてつくられていないため、すべりやすかったり、割れやすかったりすることがあります。屋外床に使える品番を選びましょう。
屋外用のタイルを室内に使ってもいいですか
玄関の土間のように、室内でも靴で歩く場所なら、屋外の床用を続けて張ることもあります。我が家もそうしています。ただ、靴を脱いで歩く場所では、表面のザラザラで靴下がひっかかったり、素足では痛かったりすることがあります。室内のどこに張るのかを伝えて、メーカーや住宅会社に確認してください。
寒くない地域なら、屋内用を外に使っても大丈夫ですか
凍害の心配が少なくても、雨や日差し、はがれ落ちないことへの備えは必要です。地域だけで判断せず、使用部位の表示を確認しましょう。
磁器質のタイルなら外に使えますか
磁器質(Ⅰ類)は水を吸いにくく、外で使うときの安心材料になります。ただ、外に使えるかどうかは、吸水率だけでは決まりません。裏あしの形や、すべりにくさなども関わるため、使用部位の表示で確認してください。
まとめ|見た目が同じでも「使える場所」は違う
タイルは、張る場所に合わせて作り分けられています。屋外用は雨や凍結に強く、壁から落ちにくいように。床用は、すべりにくく、すり減りにくいように。同じ柄に見えても、中身は違います。
気に入ったタイルを見つけたら、まずカタログの使用部位の表示を見てください。分からないときは、メーカーや住宅会社に「ここに張っても大丈夫ですか」と聞いてみましょう。家は30年以上住む場所です。少しの手間で、あとからの後悔をぐっと減らせます。
参考資料
この記事では、次の公的機関の情報も確認しました。
- 日本産業標準調査会「JIS A 5209:2020 セラミックタイル」(JIS検索で規格番号を入力すると閲覧できます)
