外壁タイルのひび割れ・欠けはなぜ起こる?原因の見分け方と補修前に確認すること

外壁タイルのひび割れ・欠けはなぜ起こる? 原因の見分け方と補修前に確認すること

外壁タイルに細いひびを見つけたり、角が欠けているのに気づいたりすると、「このままで大丈夫かしら」「タイルが悪かったの?」と心配になりますよね。

先に結論をお伝えすると、外壁タイルのひび割れや欠けは、タイルそのものが原因になることはほとんどありません。多くは、タイルを支えている下地の動き、地震の揺れ、施工のときのすき間のとり方など、タイルの「奥」に原因があります。タイルはいちばん表面にあるので、症状がタイルに出て見えるのです。

私はタイルメーカーで20年、商品開発に携わってきました。この記事では、ひびや欠けが起こるしくみと、ひびの形から原因の当たりをつける方法、そして補修を頼む前に確認しておきたいことを、つくる側の目線でお話しします。

目次

結論|ひび割れ・欠けの多くは、タイルの奥に原因がある

まずは、見えている症状と、考えられることを表にまとめました。ここに書いたのは「当たりをつける」ための目安です。最終的な判断は、建てた住宅会社や専門の業者に調べてもらってください。

見えている症状考えられることまずすること
1枚だけ、角や縁が欠けている物がぶつかった、強く当たった写真に残し、広がらないか様子を見る。破片が落ちる場所なら早めに相談
何枚ものタイルをまたいで、ひびが線のように続いている下地の継ぎ目や建物の動きの影響建てた住宅会社に連絡して点検を相談
窓や玄関の角から、ひびが伸びている力が集まりやすい場所での動き窓まわりのシーリングもあわせて確認してもらう
壁が面でふくらんで見える下地やタイルを張った層の問題近づかず、早めに住宅会社や業者へ連絡
大きな地震のあとに、ひびが増えた揺れでタイル同士や下地に力がかかった地上から写真に残し、点検を依頼

タイル1枚だけが原因で割れることは、ほとんどない

タイルは土や石を高い温度で焼き固めた「焼き物」です。外壁用のタイルは、JIS(日本産業規格)の基準に沿ってつくられていて、雨や日差しに強く、とても硬い材料です。ふつうに暮らしていて、タイル1枚が勝手に割れるということは、まず考えにくいのです。

ところが、硬いということは、裏を返せば「曲がったり伸びたりできない」ということでもあります。タイルの後ろにある下地や建物そのものが動いたとき、その動きを受け止めきれずに、いちばん表面のタイルに、ひびとなって表れることがあります。

タイルメーカーにいたころ、外壁のひびや浮きについての問い合わせは、いちばん先にタイル会社に届くことが多くありました。表面に見えているのがタイルなので、自然なことだと思います。ただ、原因を調べていくときは、建てた住宅会社と一緒に現場を確認することがほとんどでした。タイルだけを見ても、原因が分からないことが多いからです。

外壁タイルが割れる・欠ける主な原因

地震の揺れで、タイル同士がぶつかる

日本は地震の多い国です。そのため、地震への備えは建物の骨組み(躯体)だけでなく、外壁材の施工方法にもしっかり組み込まれています。

地震で建物が揺れて傾いたとき、となり合うタイル同士がこすれたり、ぶつかり合ったりすると、タイルが割れてしまうことがあります。割れれば破片が落ち、下を通る人にけがをさせるおそれもあります。地震と外壁タイルの関係は「外壁タイルの重さと耐震性|kg/㎡の確認方法と耐久性・凍害の注意点」でもくわしくお話ししています。

下地(サイディング)の伸び縮みや、継ぎ目の動き

戸建て住宅のタイル外壁では、セメント系の板(窯業系サイディング)を下地にして、その上にタイルを張ったり、引っかけたりする工法が多く使われています。

この下地の板は、表面をタイルにおおわれていても、暑さ寒さや湿気によって少しずつ伸び縮みします。日本建築仕上学会の報告書でも、サイディング下地はモルタル下地より動きが大きいとされています。また、下地の動きで仕上げにひび割れが起きないよう、板と板の継ぎ目に専用の処理(ジョイント処理)をする考え方が示されています。

つまり、下地の板の継ぎ目は、もともと「動きが出やすい場所」です。ここに決められた処理やすき間がとられていないと、継ぎ目に沿ってタイルにひびが入ることがあります。

施工のルールどおりに「すき間」がとられていない

地震の揺れや下地の伸び縮みからタイルを守るために、施工には細かなルールがあります。下地の板は決められた間隔をあけて取り付け、タイルも、となりのタイルとの間にわずかなすき間をあけて張っていきます。この小さな「逃げ」があるおかげで、建物が動いても、タイル同士がぶつかりにくくなるのです。

私がいたころ、専用の下地にタイルを引っかけ、さらに接着剤で留める乾式工法は、安全性の高い工法でした。それでも、万一このルールと違う施工がされていた場合には、ひびが起こることがありました。どんなによい工法でも、決められたとおりに施工されてこそ性能が出る、ということです。工法の違いは「外壁タイルの施工方法|乾式・湿式・接着剤張りの違いを解説」でまとめています。

窓の角や建物の角には、力が集まりやすい

窓や玄関ドアの角、建物の出っ張った角(出隅)、下地の継ぎ目などは、建物が動いたときに力が集まりやすい場所です。京都市が公開している外壁タイルの落下物対策の資料でも、ひび割れは開口部の隅や継ぎ目、建物の角などで特に注意が必要とされています。

窓まわりにはシーリング(コーキング)も使われていて、ここが傷むと雨水が入りやすくなります。目地とシーリングの違いは「外壁の目地とは?タイルの目地とシーリング(コーキング)の違い・劣化サイン・打ち替え時期」をご覧ください。

雨水の入り込みや凍結

タイルの裏側や下地に雨水が入り、冬に凍ったりとけたりを繰り返すと、ひびや表面の剥がれにつながることがあります。寒い地域ほど注意したい原因です。原因はタイルではなく、水の入口のほうにあることも多いので、ひびの近くの窓まわりやシーリングもあわせて見てもらいましょう。

物がぶつかった(欠けの多くはこれ)

タイルの角や縁が1枚だけ欠けている場合は、脚立や自転車、ボール、車の出し入れなどで物がぶつかったことが考えられます。人の手が届く高さや、駐車場・通路に面した壁に多い症状です。広がっていなければ急ぐ必要はないことが多いですが、欠けた部分から雨水が入らないか、破片が落ちないかは気にかけておきましょう。

ひびの形で、原因の当たりをつける

ひびの入り方を見ると、原因がタイル1枚の問題なのか、その奥の問題なのか、ある程度の当たりをつけられます。

  • 1枚だけ、角が欠けている:物がぶつかった可能性が高い
  • 何枚ものタイルをまたいで、線のように続いている:下地の継ぎ目や建物の動きが関係している可能性がある
  • 窓や玄関の角から斜めに伸びている:力が集まりやすい場所での動きが考えられる
  • 壁の一部が面でふくらんで見える:下地やタイルを張った層に問題がある場合が多い

最後の「面でふくらんで見える」場合は、ひびよりも「浮き」を疑ってください。ふくらんだ壁の下には近づかず、早めに住宅会社や業者に連絡しましょう。なぜ面でふくらむと下地を疑うのかは「外壁タイルの浮きはなぜ起こる?原因・見分け方・補修方法を解説」でお話ししています。

なお、ここでお伝えしているのは、あくまで「当たりをつける」ための見方です。自分でタイルをたたいて音を調べたり、はしごに登って確かめたりするのは危険なのでやめましょう。地上の安全な場所から、全体が分かる写真と、近くの写真を撮っておくだけで十分です。

タイルの間の「すき間」は、割れを防ぐためのもの

引っかけて張るタイルの外壁を近くで見ると、タイルとタイルの間に、わずかなすき間があることがあります。メーカーにいたころ、「すき間があいているのは施工ミスでは?」というお問い合わせをいただくこともありました。

じつはこのすき間は、地震や下地の伸び縮みのときに、タイル同士がぶつかって割れないようにするためのものです。そうご説明すると、ほとんどの方が納得してくださいました。すき間があること自体は心配いりません。反対に、本来すき間が必要な場所で、すき間がまったくないことのほうが、割れの原因になることがあります。

すき間の大きさや、目地材を詰めるかどうかは、工法や商品によって決められています。気になるときは、自宅の工法でどうなっているのが正しいのかを、建てた住宅会社に確認してみてください。

ひびを見つけたら|補修の前に確認したい4つのこと

1.保証と「施工区分」を、建てた会社に確認する

まずは、家を建てた住宅会社に連絡しましょう。外壁の保証が残っているかもしれませんし、自分で業者を呼んで直してしまうと、保証の対象から外れることがあります。

また、外壁の下地・接着剤・タイルを、どの会社が用意して施工したのか(施工区分)は、家によって違います。ひびの原因によって、相談先や保証の扱いが変わることがあるので、タイル会社に直接問い合わせる前に、まず建てた住宅会社に相談するのが近道です。施工区分のくわしいお話は「外壁タイルの浮きはなぜ起こる?原因・見分け方・補修方法を解説」に書いています。

2.家の工法と築年数を確かめる

同じタイル外壁でも、建てた時期によって、モルタル張り・接着剤張り・乾式工法と張り方が違います。張り方が違えば、ひびの考え方も補修の方法も変わります。新築時の仕様書や図面で、自宅のタイルがどの工法で張られているかを確かめておきましょう。

とくに築20年を過ぎている家は、ひびが1本でも見つかったら、その場所だけでなく外壁全体を一度見てもらうと安心です。小さなうちに見つけたほうが、補修の範囲も費用もおさえやすくなります。

3.タイルの品番と、予備タイルがあるか確かめる

割れたタイルを交換するには、同じタイルか、それに近いタイルが必要です。新築時の書類に、タイルの商品名・品番・色番号が書かれていないか探してみてください。家を建てたときに、予備のタイルを何枚か置いていってもらっていることもあります。

同じ品番でも、つくった時期(ロット)によって色に少し差が出ることがあります。年月がたって、廃番になっていることもあります。そのときは、大きさや色だけでなく、表面の質感まで近いタイルを探すことになります。補修に備えて残しておきたい資料は「外壁タイルは30年後どうなる?劣化しやすい場所と維持管理」でまとめています。

4.ひびの場所と広がりを、写真で記録する

いつ気づいたか、どの面のどの高さか、何枚くらいにまたがっているか、地震の前後で変わったかをメモしておきましょう。同じ場所を同じ角度で撮っておくと、ひびが広がっているかどうかを比べられます。点検のときに見る場所は「外壁タイルはメンテナンスフリー?築10年の点検で見る7項目と業者に頼む目安」を参考にしてください。

補修は「割れたタイルの交換」だけで終わらせない

ひび割れや欠けの補修は、傷んだタイルを取り外し、下地を整えて新しいタイルを張る「部分張り替え」が基本になります。ただ、原因が下地の動きや雨水の入り込みにある場合、タイルだけを取り替えても、また同じ場所で割れてしまうことがあります。

補修の提案を受けたら、「ひびの原因は何だと考えているか」「タイルの奥の下地まで確認したか」を聞いてみてください。原因の説明があって、それに合った補修方法になっているかが大切です。費用の目安は「外壁タイルのメンテナンス費用|補修相場と見積もりの見方を解説」でまとめています。

また、ひびを市販のコーキング材や接着剤で自分で埋めるのは、おすすめしません。見た目はふさがっても、原因はそのまま残りますし、あとで本格的に補修するときの手間が増えることがあります。保証の対象から外れてしまうこともあります。

建てた住宅会社に相談できない場合は、外壁タイルの補修に対応している工事店に相談しましょう。そのときは1社だけで決めず、何社かに見てもらって、説明と見積もりを比べることをおすすめします。依頼先の選び方は「外壁タイル補修業者の選び方|依頼先4つと見積書で確認したい14項目」でくわしくお話ししています。

住宅会社や業者に聞いておきたい5つのこと

  1. わが家のタイルは、どの工法で張られていますか(接着剤張り・乾式工法・モルタル張りなど)
  2. 外壁の保証はまだ残っていますか。自分で業者に頼んだ場合、保証はどうなりますか
  3. このひびの原因は、タイルですか、それとも下地や建物の動きですか
  4. 交換するタイルは、同じ品番が手に入りますか。手に入らない場合、どう合わせますか
  5. ほかの場所に、同じような症状や浮きが出ていないか見てもらえますか

外壁タイルのひび割れ・欠けでよくある質問

ひびが1本だけでも、点検してもらったほうがいいですか

タイル1枚の中だけのひびで、広がっていなければ、急いで工事をする必要はないことが多いです。ただ、何枚かにまたがっている、窓の角から伸びている、少しずつ長くなっている、という場合は、下地や建物の動きが関係している可能性があるので、点検を相談してください。

ひびを自分でコーキング材で埋めてもいいですか

おすすめしません。見た目はふさがっても原因は残りますし、保証の対象から外れることがあります。まずは建てた住宅会社に相談しましょう。

割れたタイルを1枚だけ交換することはできますか

できることが多いです。ただ、同じタイルが手に入るか、色や質感がまわりとなじむかを確認する必要があります。新築時の書類で品番を確かめ、予備のタイルがないかも探してみてください。また、原因がタイルの奥にある場合は、交換だけでは同じ場所がまた割れることがあります。

タイルとタイルの間にすき間があるのは、施工ミスですか

施工ミスとは限りません。引っかけて張る工法などでは、地震や下地の伸び縮みのときにタイル同士がぶつかって割れないよう、わずかなすき間をあけて張るよう決められています。自宅の工法で正しい状態かどうかは、建てた住宅会社に確認してください。

地震のあとに、ひびを見つけたらどうすればいいですか

まずは壁の下に近づかず、地上の安全な場所から写真を撮っておきましょう。破片が落ちている、壁がふくらんで見えるといった場合は、早めに住宅会社か外壁の点検ができる業者に連絡してください。高いところに登ったり、タイルを押したりたたいたりするのは危険なのでやめましょう。

まとめ|ひびの原因は、タイルの奥まで見て決める

外壁タイルのひび割れや欠けは、タイルがいちばん表面にあるので目立ちますが、原因はその奥にあることがほとんどです。1枚だけの欠けなら物がぶつかったことが多く、何枚にもまたがるひびや、面でのふくらみは、下地や建物の動きを疑ってみてください。

見つけたら、まずは安全な場所から写真を残し、建てた住宅会社に相談しましょう。工法や施工区分、保証、タイルの品番を確かめてから補修方法を決めると、同じ場所がまた割れてしまう心配を減らせます。

参考資料

この記事では、次の資料も確認しました。

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この記事を書いた人

いずみのアバター いずみ 元外壁タイルメーカー商品開発(20年)・元ハウスメーカー(10年)

住宅業界に10年、タイル業界に20年携わってきた「外壁と暮らしの手帖」の管理人です。外壁タイルの製品特性、施工方法、耐久性、点検・補修に関する知識と、築約10年の陶板外壁住宅での実体験をもとに、メーカーの技術資料や公的・業界基準を確認しながら、施主が判断しやすい情報を発信しています。

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