外壁タイルは、色あせや傷に強く、重厚感のある外観をつくりやすい外壁材です。一方で、採用後に「思っていたより費用がかかった」「汚れ方の違いが気になる」「補修について確認していなかった」と後悔する可能性もあります。
先に結論をお伝えすると、外壁で一番多い後悔は「汚れ」だと私は感じています。そして、汚れない外壁材はありません。後悔を減らすには、汚れにくい材料に、汚れが目立ちにくい色を組み合わせること。そして、外壁材は住宅メーカー選びでほぼ決まるため、住宅メーカーを決める前に確認しておくことが大切です。
後悔の原因は、外壁タイルそのものだけではありません。ほかの外壁材との貼り分け、色、軒の出、窓や換気口の位置、施工方法、保証など、建物全体の計画が関係します。
私はタイルメーカーで長く商品開発に携わり、展示会では外壁の汚れについて多くの質問を受けました。タイルと別の外壁材を貼り分けた方から、「タイル部分はきれいなのに、ほかの部分の汚れが気になり、全部タイルにすればよかった」という話を聞いたこともあります。ただし、汚れ方は商品や建物の条件によって異なります。
我が家では陶板外壁を全面に採用し、約10年後も後悔はありません。この記事では、外壁タイルで後悔を減らすために、採用前に確認したい7つの注意点を、実体験とともに紹介します。
外壁で一番多い後悔は「汚れ」
家づくりでは、まず予算が大切です。そのうえで外壁の後悔の声を聞いてきて、私が一番多いと感じているのは汚れです。外壁タイルでもサイディングでも、外壁材の種類にかかわらず、汚れは気になるものです。
汚れにくい外壁材はあっても、汚れない外壁材はありません。汚れ方は、日当たりや風向き、周りの道路や畑、木の多さなど、家が建つ環境に大きく左右されます。同じ家を同じ外壁材で建てても、場所によって汚れ方がまったく違うこともあります。反対に、真っ白なタイルなのに、ほとんど汚れていない家を見たこともあります。
汚れはそれだけ環境で変わるため、汚れそのものを保証の対象にしている住宅メーカーを、私は知りません。「汚れにくい」は「汚れない」という意味ではないことを、知っておいてください。
汚れにくい材料に、汚れが目立ちにくい色を組み合わせる
私がおすすめしたいのは、汚れが付きにくい材料を選び、そのうえで汚れが目立ちにくい色を選ぶことです。材料なら、表面が硬い焼き物のタイルがおすすめです。
では、濃い黒っぽい色なら安心かというと、少し違います。濃い単色は、砂ぼこりや水あかなどの白っぽい汚れが、かえって目立つことがあります。
おすすめは「色幅」のあるタイルです。色幅とは、1枚のタイルの中や、何枚かのタイルの間で、濃い部分と薄い部分があることをいいます。濃淡があると汚れがまぎれて、かなり目立ちにくくなります。我が家のダークブラウンの外壁も自然な濃淡のあるタイプで、約10年たった今も、汚れはほとんど気になっていません。
建てる土地の環境から汚れ方を予想する
汚れ方は環境で変わるからこそ、建てる場所の環境を見ておくことが、いちばん確かな手がかりになります。
建て替えの場合は、今建っている家がよい見本です。同じ場所に建て替えるなら、今の家のどの面が、どのくらい汚れているかを見てみてください。北側の壁、窓の下、換気口のまわり、庭の塀や物置なども参考になります。
新しい土地に建てる場合も、ふつうは土地が決まってから家の設計が始まります。日当たりはどうか、風通しはよいか、周りに道路や畑、木が多くないかなど、土地を選ぶときに見たことを、外壁の色選びにも生かしましょう。
たとえば白いタイルを張りたいなら、日当たりと風通しのよい面に白を使い、湿気がこもりやすい裏側は濃いめの色にする、という方法もあります。どの面にどの色を使うかは、設計士さんと相談しながら決めるのがおすすめです。
色ごとの汚れの見え方は「外壁タイルのおすすめの色は?白・ベージュ・グレー・黒・茶色を比較」で詳しく比べています。
外壁タイルで後悔を減らす7つの注意点
外壁タイルの性能や手入れ方法は、商品、施工方法、建物の形、周辺環境によって異なります。カタログや口コミだけで判断せず、自分の家の条件で次の7点を確認しましょう。
1.貼り分けは完成時だけでなく経年後も考える
タイルとほかの外壁材を貼り分けると、おしゃれな外観をつくりやすく、予算も調整できます。一方で、材料によって汚れ方、色あせ、塗り替え時期などが異なるため、年数が経つと差が目立つ場合があります。
部分的にタイルを使うなら、何を優先するのかを決めましょう。毎日目に入る玄関まわりへ気に入ったタイルを使えば、住まいへの満足感につながります。普段見えにくい面には、汚れが目立ちにくい色や柄を選ぶ方法もあります。
同じ種類の外壁材で色や柄だけを変えれば、材料の特徴や手入れ方法をそろえやすくなります。ただし、建物の大きさや形によっては貼り分けのデザイン効果が出にくいこともあるため、完成イメージと将来の手入れを一緒に確認しましょう。
2.汚れ方は外壁材だけでなく建物の設計で変わる
外壁の汚れ方は、材料だけでなく、軒や庇の出、方角、日当たり、風雨、湿気、周辺環境によって変わります。軒は雨を外壁へ当たりにくくする役割がありますが、軒があれば必ず汚れないというものではありません。
窓やサッシの下では、たまったほこりや排気ガスなどを雨水が巻き込み、雨筋として残ることがあります。キッチンの換気扇などの排気口まわりは、油分を含んだ汚れが目立つ場合もあります。外壁材の防汚機能だけでなく、窓、換気口、雨どいなどの位置と掃除方法も確認しましょう。
ただし、軒の出や換気扇フードの形は、住宅メーカーの仕様で決まっていて、施主が自由に選べないことが多い部分です。変えられない部分があるからこそ、色や柄で汚れを目立ちにくくする工夫が役に立ちます。

住宅展示場や施工例を見るときは、正面のきれいな部分だけでなく、北側や日陰、建物の裏側、窓下、換気口まわりまで観察することをおすすめします。
3.色と柄は大きな面積・自然光・汚れ方で確認する
小さなサンプルと建物全体では、色の明るさや濃さの印象が変わります。ショールームの照明と屋外の自然光でも見え方が異なるため、できるだけ大きな見本を、晴れ・曇り、日なた・日陰、朝・昼・夕方など条件を変えて確認しましょう。

白い外壁では黒ずみや雨筋、濃い色では砂ぼこりや白い汚れが目立つ場合があります。ベージュやグレーにも汚れが目立ちにくい傾向はありますが、どの色なら絶対に汚れないという答えはありません。単色だけでなく、色幅のある商品も候補に入れて比べてみてください。
4.初期費用だけでなく家全体と将来費用で判断する
新築では、外壁だけでなく家全体の総額で予算を調整します。「タイルをやめれば予算内に収まる」という判断もあれば、内装や設備を調整して外壁を優先する考え方もあります。どちらが正解かは、住む年数と価値観によって異なります。
外壁材の価格を比べるときは、初期費用に加え、10年後、20年後、30年後の点検、塗装、洗浄、目地補修、足場なども確認しましょう。メーカーの費用シミュレーションは参考になりますが、実際の金額は建物の条件や将来の工事価格によって変わります。
我が家では30年以上住む前提で、後から直しにくい屋根や外壁へ予算を優先しました。限られた予算の中で、何を優先し、何を調整するのかを家全体で考えることが大切です。
サイディングとの価格差や20年後までの維持費は「外壁タイルとサイディングの価格差は?初期費用と20年の維持費で比較」で比べています。
5.「メンテナンスフリー」という言葉だけで決めない
タイル自体に塗り替えが必要ない商品でも、外壁全体の点検が不要になるわけではありません。下地、接着材、固定部材、目地、シーリング、窓などの開口部は、別に確認する必要があります。
「ほとんど手入れがいらない」という説明を受けたら、どの部分を指しているのか、何年ごとに何を点検するのかを聞きましょう。保証の対象、期間、定期点検の条件、保証対象外となる内容も書面で確認することが大切です。
6.破損時の補修・廃番・製造ロットを確認する
外壁タイルは丈夫な材料ですが、強い衝撃、施工状態、下地の動きなどによって、割れ、欠け、浮きが生じる可能性はあります。部分交換ができるか、補修時にどのような工事と足場が必要になるかを確認しましょう。
我が家では、補修はほとんど必要ないという説明を信用し、破損時の補修方法までは確認せず、交換用の外壁材も保管していません。約10年後の現在まで困ってはいませんが、廃番の可能性を考えると、将来の入手方法を聞いておけばさらに安心だったと思います。
焼き物は天然由来の原料や焼成条件によって色幅が生まれ、同じ品番でも製造ロットが異なると色合いに差が出る可能性があります。商品名、品番、色番号、製造ロット、施工時期を記録し、追加発注や部分交換時の色差についても確認しておきましょう。
割れや浮きが見つかったときの依頼先と見積もりの見方は「外壁タイル補修業者の選び方|依頼先4つと見積書で確認したい14項目」で解説しています。
7.外壁材は住宅メーカー選びでほぼ決まる
日本は地震や台風が多く、夏の暑さや冬の寒さも厳しい国です。住宅メーカーは、こうした環境に耐えられる家をつくるために、自社の構造と工法に合わせた標準の外壁材を持っています。外壁は、家と、そこに暮らす人を守る大切な部分だからです。
そのため、施主が外壁材を自由に選べる範囲は、思っているより限られています。住宅会社によっては独自の外壁材や専用の施工方法を採用していて、気に入った外壁材が専用商品なら、ほかの住宅会社では使えない場合もあります。住宅会社を先に決めれば、その会社が扱う外壁材から選ぶことになります。
どうしても採用したい外壁材がある場合は、住宅メーカーを決める前に、次の5つを聞いておくと安心です。
- 標準の外壁材は何か。外壁タイルは標準か、オプションか
- 希望するタイル(色や、色幅のある商品)を選べるか
- オプションにした場合、差額はいくらか
- 汚れについて、どんな説明や対策があるか(軒の出、換気フードの形、表面の加工など)
- 10年後、20年後の点検とメンテナンスの内容と費用
専用商品には独自の保証が用意されている場合もありますが、保証範囲、点検、補修窓口、将来の部材供給まで確認することが大切です。住宅会社が、長期間使われた実例、注意点、将来費用まで分かりやすく説明してくれるかも判断材料になります。良い点だけでなく、採用後に困る可能性についても質問しましょう。
我が家が全面を陶板外壁にした理由
外壁を決めるとき、我が家でも貼り分けを検討しました。住宅展示場や見学した実際の家の多くが、2種類の外壁材を使ったデザインでした。
打ち合わせでは、予算と見栄えを考え、目立つ南側の玄関まわりだけへ陶板外壁を使う案も提案されました。しかし、私が陶板外壁を使いたかったのは、建て替え前の家で特に汚れが気になっていた裏側や北側でした。小さな家なので大きな貼り分けのデザイン効果も感じにくく、一部分だけ別の材料にして汚れを心配するのでは、陶板外壁を選ぶ意味が薄いと考えました。
そこで、ほかの外壁材とは貼り分けず、建物全体を陶板外壁にしました。同じ陶板外壁で色や柄だけを変える案も検討しましたが、我が家の形にはデザイン的な効果が少ないと判断し、同じ仕上げでまとめました。
部分的にタイルを使うことが悪いわけではありません。見た目を優先するなら、毎日使う玄関まわりへ気に入ったタイルを使うと満足感につながります。大切なのは、見栄え、予算、汚れ方、将来の手入れのうち、何を優先するのかを決めることです。
まとめ|外壁タイルの後悔は汚れ対策と住宅メーカー選びで防ぐ
外壁で一番多い後悔は汚れです。汚れない外壁材はないからこそ、汚れにくい材料に、色幅のある汚れが目立ちにくい色を組み合わせることをおすすめします。
また、外壁材は住宅メーカー選びでほぼ決まります。外壁タイルを使いたい場合は、住宅メーカーを決める前に、標準の外壁材、希望のタイルを選べるか、差額、汚れ対策、将来の点検とメンテナンスを確認しましょう。
自分の家の汚れが目に入ることは、毎日の小さなストレスになります。一方で、気に入った外壁やタイルが毎日目に入れば、我が家への愛着や満足感につながります。見える場所と見えにくい場所で、デザインと汚れの目立ちにくさを使い分ける考え方もあります。
我が家では、予算や見栄えだけでなく、汚れやすいと感じていた面も含めて全面を陶板外壁にしました。約10年後も後悔はありません。採用前に7つの注意点を確認し、自分が何を優先するのかを決めることが、納得できる外壁選びにつながります。
参考資料
この記事では、次の公的機関・メーカーの公式情報も確認しました。
