外壁タイルを選ぶとき、価格、耐久性、見た目のどれを優先すればよいか迷う方は多いでしょう。外壁は家の印象を決めるだけでなく、雨風や紫外線から建物を守る外周部分の一つです。後から変更する場合は、材料費だけでなく足場や下地補修などが必要になることもあります。
大切なのは、初期費用だけで決めず、何年住むのか、将来どのような点検や補修が必要になるのかまで考えることです。ただし、耐久性やメンテナンスの時期は、製品、施工方法、下地、目地、開口部、地域の気候などによって変わります。
私はハウスメーカーに勤めたあと、タイルメーカーで長く商品開発に携わってきました。自分の家の建て替えではサイディング、塗り壁、外壁タイル、陶板外壁などを比較しました。我が家は30年以上住むことを前提に、後から直しにくい屋根や外壁へ予算を優先し、陶板外壁を選びました。
この記事では、外壁タイルを価格・耐久性・施工・デザイン・保証の面から比較し、失敗を減らすための確認基準を実体験とともに紹介します。
外壁タイルは初期費用だけで選ばない
外壁タイルは、ほかの外壁材より初期費用が高くなる場合があります。私も費用は気になりましたが、この家に30年以上住むつもりだったため、建築時の金額だけでなく、30年間に必要になる手入れや補修まで考えて比較しました。
住宅全体の予算は決まっていたので、すべてを希望どおりにすることはできません。そこで、後から比較的変更しやすい内装や設備と、足場が必要になりやすい屋根や外壁を分けて考え、修正が難しい外周部分を優先しました。
費用を比べるときは、外壁材の価格だけでなく、定期点検、洗浄、目地や開口部の補修、足場、部分交換なども含めて考える必要があります。必要な作業や時期は製品と施工方法によって異なるため、10年後、20年後、30年後に想定される手入れと費用を、住宅会社へ確認しておくと安心です。
メーカーの費用シミュレーションも参考になりますが、建物の面積や形、地域、工事価格などによって実際の金額は変わります。自分の家の条件に合わせた説明や見積もりを確認することが大切です。
外壁タイルを選ぶ7つの基準
外壁タイルは、商品名や価格だけでは十分に比較できません。仕上げ材の特徴に加えて、施工方法、将来の補修、保証、実例などを同じ条件で確認することが大切です。ここでは、私が比較するときに重視した7つの基準を紹介します。
1.製品の適用条件と耐候性
最初に、その製品が住宅の外壁に適したものか、どのような環境で使用できるのかを確認します。雨、紫外線、暑さや寒さなどに対する特徴だけでなく、寒冷地や沿岸地域などで使用条件が設けられていないかも確認しましょう。
カタログに「汚れにくい」「色あせにくい」と書かれていても、効果や耐久性を保証する条件は製品ごとに異なります。試験結果だけで判断せず、実際の使用環境、施工条件、注意事項まで住宅会社やメーカーへ確認することが大切です。
2.施工方法・下地・目地
外壁の性能は、表面のタイルだけで決まるものではありません。タイルの固定方法、接着材、下地、防水層、目地などを含めた外壁全体の仕組みとして確認する必要があります。
また、タイル自体に塗り替えが不要でも、窓やドアなどの開口部、取り合い部分、目地材などに点検や補修が必要になる場合があります。どの部分を、何年ごとに確認するのか、傷んだ場合にどのように補修するのかまで聞いておきましょう。

3.点検・補修方法と足場の費用
外壁材の手入れが少なくても、建物全体の点検が不要になるわけではありません。汚れの落とし方、ひび割れや浮きが見つかった場合の補修方法、部分交換ができるかどうかを確認します。
外壁の補修では、作業そのものより足場の費用が大きな負担になることもあります。将来必要になりそうな作業について、足場が必要か、屋根の点検や補修と同時に行えるかまで聞いておくと、長期的な費用を考えやすくなります。
4.保証範囲と定期点検
保証は期間の長さだけでなく、何が対象になるのかを確認します。タイルの割れや剥がれ、下地、目地、雨水の浸入などは、同じ保証ではなく別々の条件になっている場合があります。自然災害や経年変化など、保証の対象外になる条件も確認しておきましょう。
定期点検の時期、無料か有料か、点検を受けることが保証の条件になっているかも大切です。保証書や点検結果は保管し、説明を受けた内容もできるだけ書面で残しておくと、将来の補修時に役立ちます。
5.長期間使われた実例
私が外壁材を選ぶとき、特に安心材料になったのは、実際に長期間使われている家の例でした。試験結果も参考になりますが、私は「実験は実験」と感じていたため、住宅会社にお願いし、すでに建っている家を見学させてもらいました。
可能であれば、完成直後の施工例だけでなく、10年、20年と年数を重ねた例も確認しましょう。同じ製品や施工方法か、日当たり、雨の当たり方などの条件も確認します。実例がそのまま自宅の将来を保証するわけではありませんが、経年後の色や汚れ、目地の状態を知る重要な手がかりになります。
6.色・柄・質感
耐久性や費用が条件に合っていても、見た目が気に入らなければ、毎日暮らす家への満足感が下がってしまいます。色だけでなく、表面の凹凸、つや、目地の見え方、柄の繰り返しなども確認しましょう。

小さなサンプルと大きな外壁では、色や柄の印象が変わります。できるだけ大きな見本を屋外の自然光で見て、屋根、サッシ、軒天、玄関ドアとの組み合わせも確認することが大切です。
色の選び方は「外壁タイルのおすすめの色は?白・ベージュ・グレー・黒・茶色を比較」、柄と質感の違いは「外壁タイルの柄と質感|石調・レンガ調・木目調の違いを比較」、建物全体をすっきりまとめるコツは「おしゃれな外壁タイルの選び方|外観で失敗しないデザインのコツ」で、それぞれくわしくお話ししています。
7.住宅会社の説明と対応
外壁材そのものだけでなく、住宅会社が質問に分かりやすく答えてくれるかも判断材料になります。「ほとんど手入れがいらない」という説明だけでなく、保証期間、点検予定、補修方法、将来の費用まで具体的に説明してもらいましょう。
私の場合は、長期間使われた実例に加えて、保証、点検、補修方法、将来費用について説明を受けました。分からない点を質問したときの対応や、良い点だけでなく注意点も説明してくれるかを確認することが、納得できる選択につながります。
カタログの表示で分かること|Ⅰ類・磁器質は汚れに強い?
タイルメーカーのカタログには、JIS(日本の国家規格)の試験結果にもとづいた表示があります。難しそうに見えますが、見るところが分かれば、タイル選びの心強い目安になります。
| カタログの表示 | 意味 | 外壁で見るポイント |
|---|---|---|
| JIS A 5209 | 日本のセラミックタイルの規格に合っていること | 規格番号が書いてあるか |
| Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類 | タイルが水を吸う割合(吸水率)による区分。Ⅰ類は3.0%以下、Ⅱ類は10.0%以下、Ⅲ類は50.0%以下 | 数字が小さいほど水を吸いにくく、よく焼きしまったタイル |
| 磁器質・せっ器質・陶器質 | 2008年のJIS改正より前の呼び方。Ⅰ類がほぼ磁器質、Ⅱ類がほぼせっ器質、Ⅲ類がほぼ陶器質にあたる | 今もカタログや売り場で使われている |
| 使用部位(屋外壁など) | どこに使ってよいタイルか | 「屋外壁」に使えると書いてあるか |
| 耐凍害性 | 凍ったりとけたりを繰り返しても傷みにくいか | 寒い地域では必ず確認したい |
寒い地域で気になる凍害(タイルが吸った水が凍ってふくらみ、割れや剥がれが起こること)と吸水率の関係は、「外壁タイルの重さと耐震性|kg/㎡の確認方法と耐久性・凍害の注意点」で説明しています。
JISでは、屋外の壁に使うタイルには、裏側に「裏あし」と呼ばれる凹凸がなければならないと決められています。裏あしは、タイルを壁からはがれにくくするための大切な形です。
なお、JISはタイルとして当然クリアしなければならない最低ラインです。実際には、JISより厳しい独自の基準を設けているタイルメーカーや住宅会社が多くあります。くわしくは「外壁タイルは30年後どうなる?劣化しやすい場所と維持管理」でお話ししています。
Ⅰ類・磁器質が汚れに強いと言われる理由
一般的に、Ⅰ類・磁器質のタイルは汚れにもっとも強いとされています。理由は、吸水率の低さです。
- 吸水率が低い=水をほとんど吸い込まない
- 水を吸い込まない=汚れもタイルの中に入り込みにくい
- 汚れが表面にとどまる=雨や水で流れ落ちやすい
カタログの分類を見るだけでも、こうした性質の違いが分かります。
ただし「Ⅱ類・せっ器質だから汚れやすい」とは言えない
とはいえ、汚れにくさは吸水率だけでは決まりません。外壁の汚れには、屋根、とくに軒の出幅(屋根が外壁より外に張り出している長さ)が大きく影響します。立地や日当たり、タイルの色や表面の凹凸によっても、汚れの目立ち方は変わります。軒や色と汚れ方の関係は「外壁タイルで後悔しないために|一番多い「汚れ」の対策と7つの注意点」でくわしく説明しています。
ハウスメーカーの営業の方が「うちは磁器質のタイルを使っているので、汚れに強いですよ」と説明するのを、私もよく耳にしてきました。間違いではありません。でも、それだけで汚れにくい家になるわけではありません。タイルの種類とあわせて、軒の出幅や外壁の向きも一緒に確認してみてください。
輸入タイルは日本の基準に合っているか確かめる
最近は、海外から輸入されたタイルも増えています。海外の製品は、その国の規格で作られ、試験されていることがあります。日本の規格に合っているか、日本の気候、とくに冬の凍結に耐えられるかは、別に確かめておくと安心です。
カタログにこうした表示が見当たらないときは、販売店や施工会社に次のようにたずねてみてください。
- 日本の規格(JIS)で試験していますか
- 屋外の壁に使えるタイルですか
- 寒い地域でも使えますか(耐凍害性はありますか)
表示はあくまで目安ですが、何も分からないまま選ぶよりずっと安心です。
我が家は「後から直しにくい場所」を優先した
建て替え前の家は築約35年で、長い年月の間に地震や台風も経験し、傷みが重なって雨漏りするようになりました。この経験が、家を建て替える大きなきっかけの一つになりました。
雨漏りは、外壁の仕上げ材だけで決まるものではありません。屋根、防水層、窓などの開口部、目地、施工状態など、さまざまな部分が関係します。そのため、新しい家では屋根や外壁を含め、建物の外周部分をしっかり選びたいと考えました。
限られた予算の中では、どこを優先し、どこを諦めるかという選択が必要でした。内装やキッチンなどは後からリフォームできますが、屋根や外壁の工事は足場が必要になり、大がかりになることがあります。そこで我が家では、後から直しにくい部分へ予算を優先しました。
多少の汚れは受け入れても、30年間の洗浄や塗り替えなどの負担をできるだけ少なくしたいと考え、陶板外壁を選びました。初期費用だけでなく、長く住む間の安心と手入れのしやすさを重視した結果です。
素材ごとの比較は同じ条件で行う
私は、サイディング、塗り壁、外壁タイル、陶板外壁などを一通り比較しました。同じ種類の外壁材でも、製品、表面加工、施工方法によって価格や手入れの内容は異なります。「この素材なら必ず長持ちする」と種類だけで決めず、具体的な製品と工事内容で比べることが大切です。
比較した製品には、汚れを付きにくくする工夫や、将来のメンテナンス負担を抑える特徴がありましたが、費用にはかなり差がありました。最終的には金額だけでなく、見た目の好みや住宅会社の説明も含めて判断しました。
見積もりと説明で確認したい8つの質問
複数の外壁材を比較するときは、それぞれの会社へ同じ質問をすると違いが分かりやすくなります。口頭の説明だけでなく、見積書、保証書、点検予定表など、後から確認できる資料も受け取りましょう。
- 初期費用には、材料、施工、下地処理、足場などのどこまでが含まれていますか
- 10年後、20年後、30年後に想定される点検や手入れは何ですか
- 洗浄、塗り替え、目地や開口部の補修が必要になる可能性はありますか
- 将来の点検や補修に足場は必要ですか。費用の目安はいくらですか
- 保証の対象、期間、対象外となる条件、定期点検の条件は何ですか
- 割れや傷みが生じた場合に部分補修や交換はできますか
- 同じ製品や施工方法を長期間使用した実例を確認できますか
- タイルや接着剤、シーリング材に、JISより厳しい自社の基準はありますか(その基準が保証年数の裏づけになっていることが多いため)
まとめ|外壁タイルは長く住む前提で選ぶ
外壁タイルを選ぶときは、初期費用や見た目だけでなく、施工方法、将来の点検・補修、足場の費用、保証まで含めて比較することが大切です。外壁材の種類だけで判断せず、具体的な製品と自宅の条件に合わせて確認しましょう。カタログの吸水率の区分(Ⅰ類・Ⅱ類など)や使用部位の表示も、よい目安になります。
我が家では30年以上住むことを前提に、後から直しにくい屋根や外壁へ予算を優先しました。最終的な判断では、費用だけでなく、見た目の好み、住宅会社の説明、長期間使われた実例も大きな材料になりました。
どこにお金をかけるかは、予算や暮らし方によって異なります。10年後、20年後、30年後に必要になる手入れまで質問し、納得できる説明と資料を確認してから選ぶことが、後悔を減らすことにつながります。
参考資料
この記事では、次の公的機関・メーカーの公式情報も確認しました。
